2024年家計統計・2025年デジタルサービス調査を使用
サブスクリプションの支払いは、クレジットカードが主流なのでしょうか。それとも、日本では口座振替がまだ強いのでしょうか。
結論から言うと、「サブスク=カード」と一括りにはできません。デジタルコンテンツ・サービスではクレジットカードが最も利用される一方、家賃、教育、公共料金、保険など定期支払いと関係の深い費目では、銀行口座を使う支払いが非常に大きな割合を占めるものがあります。
Otakuwalletでは、総務省「令和6年全国家計構造調査」の購入形態10区分×収支項目細分類の原表を使い、定期・反復支払いとの関連が明確な費目から、親子項目の重複を避けて選んだ代表13費目について「クレジット・掛買い・月賦」と「口座間振込等」を直接比較しました。これは全費目を網羅したランキングや、Recurring Payment Gapの上位13費目ではありません。
検索上は「口座振替」という言葉が一般的ですが、本稿の公的統計上の区分は「口座間振込等」です。口座振替だけを意味する数字ではありません。
- 結論:定期支払い関連費目は「銀行優位」から「カード優位」まで大きく分かれる
- Recurring Payment Map|カード vs 口座間振込等
- 代表13費目を原表から比較
- 家賃・教育は圧倒的に銀行口座
- 公共料金・保険はカードが浸透しても銀行優位
- 通信費ではカード等と口座間振込等が拮抗
- スポーツクラブもカードが銀行口座を上回る
- 家計全体ではカード30.0%、口座間振込等27.2%
- デジタルコンテンツ・サービスではカード46.2%が首位
- 「デジタルサブスク=カード」「固定費=口座」と単純化はしない
- Otakuwallet独自指標:Recurring Payment Gap
- このデータから次に見たい市場
- 調査方法と注意点
- 出典
結論:定期支払い関連費目は「銀行優位」から「カード優位」まで大きく分かれる
- 民営家賃:カード等2.3%に対し、口座間振込等92.3%。
- 授業料等:カード等7.7%に対し、口座間振込等79.6%。
- 携帯電話通信料:カード等45.5%、口座間振込等51.1%でほぼ拮抗。
- インターネット接続料:カード等51.3%、口座間振込等47.3%でカード側がわずかに上回る。
- スポーツクラブ使用料:カード等48.0%、口座間振込等43.2%でカード側が上回る。
今回見た定期支払い関連13費目では、家賃・教育・公共料金では口座間振込等の割合が高く、インターネット接続料やスポーツクラブ使用料ではカード等が口座間振込等を上回るという違いが確認できます。これは費目別の支払構造の差を示すもので、各費目の支出すべてが定期請求であることを意味しません。
Recurring Payment Map|カード vs 口座間振込等
出典:総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 参考第1表」。Otakuwallet計算。各比率=各支払手段の1世帯当たり1か月間の支出÷当該費目の合計支出。参考第1表の購入形態別結果は基本調査のみで作成され、他の結果表とは集計対象が異なる場合があります。
代表13費目を原表から比較
| 費目 | カード等 | 口座間振込等 | Gap | 1世帯当たり月額支出 |
|---|---|---|---|---|
| 民営家賃 | 2.3% | 92.3% | +90.0pp | 14,144円 |
| 年極・月極駐車場借料 | 1.2% | 89.5% | +88.3pp | 1,356円 |
| 授業料等 | 7.7% | 79.6% | +71.9pp | 6,189円 |
| 上下水道料 | 20.7% | 73.8% | +53.1pp | 4,383円 |
| 火災・地震保険料 | 19.2% | 68.1% | +48.9pp | 933円 |
| 医療保険料 | 27.6% | 69.8% | +42.2pp | 1,238円 |
| ガス代 | 27.9% | 66.0% | +38.1pp | 3,442円 |
| 固定電話通信料 | 29.6% | 66.8% | +37.2pp | 1,123円 |
| NHK放送受信料 | 31.0% | 67.3% | +36.3pp | 1,161円 |
| 自動車保険料(任意) | 29.0% | 60.1% | +31.0pp | 2,273円 |
| 携帯電話通信料 | 45.5% | 51.1% | +5.6pp | 8,892円 |
| インターネット接続料 | 51.3% | 47.3% | -4.0pp | 2,804円 |
| スポーツクラブ使用料 | 48.0% | 43.2% | -4.8pp | 377円 |
「カード等」は原表の「クレジット・掛買い・月賦」。Gap=口座間振込等の割合-カード等の割合。月額支出は全国の全世帯で平均した金額で、契約者・利用者1人当たりの料金ではありません。また、各費目の支出すべてが継続請求とは限りません。
家賃・教育は圧倒的に銀行口座
最も差が大きいのは住居・教育です。民営家賃では口座間振込等が92.3%で、カード等は2.3%にとどまります。授業料等も口座間振込等79.6%、カード等7.7%です。
この結果は、「毎月払う支出ならカードが強い」とは限らないことを示しています。反復支払いであっても、既存の徴収・口座登録の仕組み、加盟店側のカード受入、手数料、契約慣行などによって決済レールは大きく異なります。
公共料金・保険はカードが浸透しても銀行優位
13費目外の参考値として、電気代はカード等36.4%、口座間振込等59.2%でした。13費目に含むガス代は27.9%対66.0%、上下水道料は20.7%対73.8%です。カード払いが相当程度普及している一方、これらの費目では口座間振込等の割合がより高くなっています。
保険も同様で、医療保険料はカード等27.6%に対し口座間振込等69.8%、任意の自動車保険料は29.0%対60.1%でした。
通信費ではカード等と口座間振込等が拮抗
通信費の中でも支払構造は異なります。固定電話通信料はカード等29.6%、口座間振込等66.8%ですが、携帯電話通信料は45.5%対51.1%まで接近します。そしてインターネット接続料ではカード等51.3%が口座間振込等47.3%をわずかに上回りました。
同じ通信費でも支払手段の構成が大きく異なります。ただし、この横断データだけから契約形態や顧客接点が原因だと断定することはできません。Otakuwalletでは、費目によって口座間振込等優位とカード等優位が分かれる点をRecurring Payment分析の重要な観察点と考えます。
スポーツクラブもカードが銀行口座を上回る
スポーツクラブ使用料はカード等48.0%、口座間振込等43.2%でした。全国全世帯平均の支出分類なので「スポーツクラブ会員の48%がカード払い」という意味ではありませんが、支出金額ベースではカード側が銀行口座側を上回っています。
13費目外の参考値として、月謝類全体ではカード等21.1%、口座間振込等38.0%、現金39.6%です。定期的な支払いと関係する費目でも、支払手段の構成は大きく異なります。
家計全体ではカード30.0%、口座間振込等27.2%
同じ参考第1表の「消費支出」行をOtakuwalletで再計算すると、1世帯当たり1か月の消費支出25万2,948円のうち、クレジット・掛買い・月賦は7万5,859円(29.99%)、電子マネー(ポストペイ)は6,221円(2.46%)、口座間振込等は6万8,794円(27.20%)でした。
日本の家計決済を「現金かカードか」の二択だけで捉えると、この27%規模の銀行口座レールを見落とします。特に定期支払い関連費目を分析する際は、口座間振込等を独立して見る必要があります。
デジタルコンテンツ・サービスではカード46.2%が首位
一方、SBペイメントサービスが2025年5月21日〜6月5日に1,857人を対象に実施した調査では、デジタルコンテンツ・サービスで「最も利用する決済手段」の1位はクレジットカード46.2%でした。2位はPayPay18.1%です。
ただし、この46.2%は回答者の「最も利用する決済手段」の割合であり、取引金額シェアではありません。また対象には動画・電子書籍・ゲームだけでなく、チケット、フードデリバリー等も含まれます。全国家計構造調査の支出金額割合と数値を直接比較することはできません。
それでも、オンラインサービス領域でカードが主要な支払手段であることを示す最新の参考値です。2017年の消費者庁調査でも、有料動画配信サービスでは各年代の73.1〜87.5%がクレジットカードを利用していました(複数回答)。
「デジタルサブスク=カード」「固定費=口座」と単純化はしない
家計統計とデジタルサービス調査では対象・指標が異なるため、「デジタルサービスほどカード比率が高い」と数値を直接比較して結論づけることはできません。一方、インターネット接続料やスポーツクラブでも口座間振込等の割合は4割台あり、デジタルサービス側でもPayPayやキャリア決済などが存在します。
したがって実態は、カード vs 口座振替の二者択一ではなく、カード・銀行口座・ウォレット/ID決済がサービスごとに異なる比率で競合していると見るべきです。
Otakuwallet独自指標:Recurring Payment Gap
本稿では参考指標として、Recurring Payment Gap=口座間振込等の支出割合-カード等の支出割合を使います。
- プラスが大きい:銀行口座レールが強い費目
- 0に近い:カードと銀行口座が拮抗
- マイナス:カード側が上回る費目
ただし、これは市場シェアでも「カード化可能市場」の金額でもありません。費目の全支出が定期請求とは限らず、銀行振込をカードへ移せるかどうかも、手数料、規制、加盟店運用、顧客属性などに左右されます。
このデータから次に見たい市場
今回のMapから、カード業界の観点で次に深掘りする価値が高いのは、家賃、教育、公共料金、保険などです。特に支出規模が大きく、銀行口座レールの割合が高い領域について、なぜカード化が進まないのかを制度・加盟店経済性・利用者行動から分解すると、単なるキャッシュレス比率とは違う実務的な分析になります。
一方、インターネット接続料やスポーツクラブのようにカードが銀行口座を上回る費目は、「何がカード利用を促したのか」を比較するベンチマークにもなります。
調査方法と注意点
- 原表:総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 参考第1表」。全国・総世帯・全世帯・世帯主性別平均の「1世帯当たり1か月間の支出」を使用。
- 対象13費目は、定期・反復支払いとの関連が明確な費目から親子項目の重複を避けて選んだ代表例で、全費目を網羅したランキングやGap上位13費目ではない。
- 参考第1表の購入形態別結果は基本調査の結果のみで作成される。全国家計構造調査は統計表によって集計対象世帯が異なるため、他表の全国値と単純に同一母集団として比較できない場合がある。
- Card Share=「クレジット・掛買い・月賦」÷当該費目の合計支出。
- Bank Rail Share=「口座間振込等」÷当該費目の合計支出。
- 電子マネー(ポストペイ)やデビットカードはカード等へ合算せず、原表上の別区分として扱う。
- QRコード・バーコード決済は、実際に選択した支払方法の購入形態へ分類される。
- 口座間振込等は口座振替だけを意味せず、預貯金口座から販売事業者等への振込などを含む。
- 月額支出は全国の全世帯平均であり、契約者・利用者当たりの平均料金ではない。
- 基本調査の家計簿は2024年10月・11月の2か月間を対象とし、参考第1表は「1世帯当たり1か月間の支出」として表章されているため、季節性のある費目には注意が必要。
出典
- e-Stat「令和6年全国家計構造調査 参考第1表」 — 表番号1、対象2024年、原表取得・検証:2026年8月29日〜9月2日
- 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査の標本設計」 — 購入先・購入形態別結果が基本調査のみで作成されることを確認
- 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 利用上の注意」 — 統計表による集計対象差を確認
- 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 家計簿の記入のしかた」 — 支払方法の定義確認
- SBペイメントサービス「ネットショップで人気の決済手段ランキング」2025年度調査 — 調査期間2025年5月21日〜6月5日
- 消費者庁「有料動画配信サービスの支払方法」 — 2017年の歴史的参考値

