法人カードの利用が広がっているかを調べるとき、まず押さえたいのが「取扱高」と「発行枚数残高」です。前者は一定期間にカードで決済された金額、後者はある時点で有効なカードの枚数を表します。同じ法人カードの統計でも、この二つが答える問いは異なります。
キャッシュレス推進協議会が2026年4月30日に公表した調査では、2025年の法人カード取扱高は6兆3,240億円、年末の発行枚数残高は1,041万2,000枚でした。2025年の調査参加15社から集めた値であり、日本の法人カード市場全体を網羅した総額としては扱えません。
2021〜2025年の公表値
| 年 | 年間取扱高 | 12月末の発行枚数残高 | 当該年を初めて公表した調査の参加社数 |
|---|---|---|---|
| 2021 | 3.459兆円 | 904.2万枚 | 17社 |
| 2022 | 4.333兆円 | 948.8万枚 | 17社 |
| 2023 | 5.230兆円 | 975.8万枚 | 17社 |
| 2024 | 5.805兆円 | 1,001.5万枚 | 16社 |
| 2025 | 6.324兆円 | 1,041.2万枚 | 15社 |
数値は2026年4月30日公表の原図から転記し、取扱高の十億円を兆円、発行枚数の千枚を万枚に換算。参加社数は各回の公表ページによります。2026年公表図に過去年も掲載されていますが、全期間を同一15社に揃えて再集計した系列だと確認できる説明は見つかっていません。
公表値を並べると取扱高と枚数はいずれも増えています。ただし、取扱高の増加をそのまま「同じ会社群の成長」や「日本市場全体の成長」と読むには、調査対象の継続性を確かめる必要があります。
参加社数の変化をどう読むか
2021〜2023年を扱う初回調査は17社、2024年の調査は16社、2025年は15社です。公表された参加社一覧を比較すると、2024年からクラウドキャスト、2025年からイオンフィナンシャルサービスが一覧に含まれていません。
この一覧の違いだけから、両社の事業縮小や取扱高の消失を判断することはできません。参加しなくなった理由や取扱高の移管先は、この調査の公表資料だけでは確認できないためです。同一参加社だけの過去値も得られていないので、本記事では前年比を純粋な市場成長率として強調しません。
「法人カード」に含まれる範囲
この調査は大企業だけを対象とするものではありません。中小企業やその代表者、個人事業主との契約で発行された決済手段も含み、国際ブランドの付かないハウスカードも対象です。したがって「法人カード利用額」を、法人企業同士の仕入代金だけの決済額と読み替えることはできません。
また、年末の枚数残高は、その年に新しく発行した枚数ではありません。1社が複数枚を保有する場合もあるため、導入企業数とも区別する必要があります。実際に使われたカードの枚数や企業数は、この表からは分かりません。
取扱高を枚数で割れば、1枚当たりの利用が分かるか
年間取扱高を年末枚数で割る計算はできます。しかし分子は1年間の累積、分母は年末1時点の残高です。年間平均の有効枚数や稼働枚数が分からない以上、実際に使われた1枚当たりの平均利用額とは一致しません。カードの利用頻度や企業ごとの支出規模を説明するには、追加のデータが必要です。
日本クレジット協会の枚数統計とは役割を分ける
クレジットカード全体の発行枚数や法人カードの位置付けは、クレジットカード発行枚数の推移で整理しています。別の機関の枚数と本調査の取扱高を結び付ける際は、調査対象、法人カードの定義、集計時点を揃える必要があります。
異なる調査の枚数比を本調査の正式な市場カバー率とみなし、その逆数を取扱高に掛けても、市場総額の裏付けにはなりません。調査に含まれないカードが、含まれるカードと同じように使われている保証がないためです。
今のデータで言えること
本調査は、法人向けのカード決済について、実際に集計された金額と枚数を継続して確認できる資料です。一方、日本全体の法人支出のうち何%がカード化されたか、今後いくらカードに置き換わるか、どの用途が増加を支えたかまでは、この集計だけでは答えられません。
今後の確認点は、参加社を揃えた時系列、稼働枚数、利用用途別の内訳です。これらが得られれば、枚数の増加、カード利用の活発化、調査範囲の変化を切り分けやすくなります。
出典・集計条件
資料取得・原図照合:2026年10月20日。対象年は暦年。取扱高と枚数は公表値を単位換算したもので、市場総額の推計値ではありません。
