国際送金はなぜ遅く、高いのか? Correspondent BankingとSWIFTの仕組み

海外へ送金するとき、利用者がすることは単純です。

相手の口座を指定し、金額を入力し、送金ボタンを押す。

ところが銀行の裏側では、そのお金が送り手の銀行から受取人の銀行へ一直線に移動するとは限りません。両方の銀行に直接の口座関係がなければ、間に別の銀行が入り、さらに別のpayment systemを通ることもあります。

ここで重要なのが Correspondent Banking(コルレス銀行・銀行間代理関係) です。

そして最初に一つ、よくある誤解を外しておきます。

SWIFTで送金messageを送ることと、moneyそのものが移動することは同じではありません。

SWIFTは銀行同士が安全に標準化された金融messageを交換するnetworkです。一方、実際の資金移動は銀行同士が持つaccountをdebit / creditしたり、各国のpayment systemでsettlementしたりすることで進みます。

国際送金が国内送金より複雑になりやすい理由は、この「message」「bank account」「payment system」「FX」「compliance」が複数の国をまたいでつながるからです。


まず結論:SWIFTでmessageが届くこととmoneyが届くことは別

国際送金を理解するには、三つのlayerを分けると分かりやすくなります。

Layer 何をしているか 代表例
Message 誰が誰へ、いくら支払うかを伝える SWIFT
Settlement / Account 銀行同士の残高を動かす correspondent account、RTGS等
Customer credit 最終的に受取人の口座へ反映する 受取銀行

SWIFT自身も、銀行や金融機関がcross-border transactionについて安全にcommunicationするnetworkだと説明しています。SWIFTは顧客のfundを保有せず、顧客accountを管理する主体でもありません。

つまり、SWIFT messageが速く届いたとしても、それだけで受取人の口座まで着金したとは限りません。

この違いが、国際送金の仕組みを理解する出発点です。


Correspondent Bankingとは何か

BISのCommittee on Payments and Market Infrastructures(CPMI)はCorrespondent Bankingを、ある銀行が他の銀行の預金を保有し、その銀行にpaymentなどのserviceを提供する関係として説明しています。

たとえば日本のBank Aが、海外のBank CへUSDを送りたいとします。

しかしBank AとBank Cが、お互いに直接accountを持っているとは限りません。

そこで、両者をつなげられるBank Bが間に入ります。

Payer → Bank A → Correspondent Bank B → Bank C → Beneficiary

CPMIの基本図も、Bank AとBank Cに直接のaccount relationshipがないため、Bank Bをintermediaryとして使う例を示しています。

場合によってはBank Bだけでは足りず、さらに複数のintermediary bankがchainに入ります。

この「銀行同士の口座のつながり」が、国境を越えてmoneyを動かすための橋になります。


Nostro / Vostro:国際送金の「口座の橋」

Correspondent Bankingでは Nostro / Vostro account という言葉がよく出てきます。

難しそうですが、同じ銀行間口座をどちら側から見るかの違いと考えると理解しやすくなります。

Bank AがBank BにUSD accountを持っているとします。

Bank Aから見れば、これは「Bにある私たちのaccount」、つまりnostroです。

Bank Bから見れば、「Aのために私たちが持っているaccount」、つまりvostroです。

国際送金では、こうしたaccountの残高をdebit / creditすることで銀行間のobligationをsettleできます。

もちろん実務ではcurrency、payment system、銀行間契約によって経路はもっと複雑になります。重要なのは、moneyはmessageの中を飛んでいくのではなく、銀行やpayment systemのaccount balanceとして動くという点です。


SWIFTは何をして、何をしていないのか

SWIFTは国際送金で非常に重要ですが、「世界共通の銀行口座」を持っているわけではありません。

役割はsecure financial messagingです。

送金銀行は、誰にいくら支払うのか、どの銀行を経由するのかといったinstructionをstandardised messageとして送ります。

そのmessageを受けた銀行が、自らのaccount関係やpayment systemを使って処理を進めます。

この区別は、OtakuwalletのBangladesh Bank事件の記事ともつながります。

あの事件で重要だったのは「SWIFTという中央networkからmoneyが盗まれた」のではなく、銀行側のendpointから正しく認証されたように見える不正なpayment instructionが送られたことでした。

messageのauthenticationと、paymentを行う意思の正しさは別です。

平時の国際送金でも同じように、message layerとmoney / settlement layerを分けて考える必要があります。


なぜ国際送金は遅くなるのか? 7つのfriction

2020年、FSBとCPMIはcross-border paymentsの問題を整理し、代表的なfrictionを七つ挙げました。

Friction なぜ遅延・非効率につながるか
Fragmented / truncated data 国やsystemごとにdata formatが異なり、straight-through processingが難しくなる
Complex compliance checks AML/CFT、sanctions、data protection等の確認やexception処理が必要になる
Limited operating hours 国・銀行・payment systemの営業時間とtime zoneがずれる
Legacy technology batch processingや古いsystem間のhandoffが残る
Long transaction chains intermediaryが増えるほど確認・処理・reconciliationが増える
Funding costs 複数currencyで資金をpre-positionする必要が生じることがある
Weak competition network参加や接続のbarrierが高く、競争圧力が弱くなり得る

ここから分かるのは、「国際送金が遅いのはSWIFTが遅いから」という説明が単純すぎることです。

messageが数秒で届いても、途中のbankでcompliance exceptionが出れば止まります。

受取側のpayment systemがまだ動いていなければ待ちます。

必要なcurrency liquidityがなければfundingやFX処理が必要になります。

cross-border paymentは、一つのsystemではなく複数のsystemとinstitutionを直列につないだprocessだからです。


なぜ高いのか? Feeだけではないcost stack

利用者から見えるのは「海外送金手数料」かもしれません。

しかしprovider側のcostは一枚ではありません。

sending bank、intermediary / correspondent bank、receiving bank、FX conversion、liquidity、compliance、exception handling、system connectionなどが重なります。

特にcross-borderでは、currencyをまたいでliquidityを確保するため、あらかじめ資金を置いておくprefundingが必要になる場合があります。その資金にもcostがあります。

また、どのintermediaryがいくら差し引くか、最終的なFX rateがどうなるかを利用者が事前に完全には把握できない場合があります。

だからG20のcross-border payments改革は、cost、speedだけでなくtransparencyも独立した課題として扱っています。


Remittanceは今も平均6%台――ただし「すべての国際送金」ではない

国際送金のcostを実感しやすい統計の一つがWorld BankのRemittance Prices Worldwideです。

World Bankのcurrent pageでは、remittanceを送るglobal average costは送金額の6.36%とされています。

一方、G20 / FSBは、$200のremittanceを送るglobal average costを2030年までに3%以下、5%を超えるcorridorをなくすことをtargetにしています。

ただし、ここは定義に注意が必要です。

remittanceは主に個人から個人へ送る比較的小口のcross-border paymentです。

6.36%を企業間送金やbank-to-bank wholesale paymentを含む「国際送金全体の平均手数料」と読むのは誤りです。

このサイトでは、数字そのものより「どのpayment segmentの数字なのか」を分けて扱います。


国内RTGSが速くても、なぜ国際送金は難しいのか

国内であれば、中央銀行moneyを使うRTGSや、24/7に近いfast payment systemが整備されている国も増えています。

それでも国際送金になると、senderとreceiverのjurisdictionが変わります。

法規制が変わる。

通貨が変わることがある。

営業時間も変わる。

bank同士のaccount relationshipも変わる。

つまり、国内railが高速でも、そのrail同士を国境を越えてどう接続するかという別の問題が残ります。

RTGSとfinalityそのものについては、RTGSとは?CHAPSと銀行間決済のファイナリティで整理しています。


2027年に向けて、何を直そうとしているのか

G20のRoadmap for Enhancing Cross-border Paymentsは、cross-border paymentをfaster、cheaper、more transparent、more accessibleにすることを目標にしています。

retail cross-border paymentでは、2027年末までに75%を一時間以内にrecipientが利用可能にし、global average costを1%以下にするtargetが設定されています。

remittanceにもspeed targetがあり、costについては2030年のSDG targetが置かれています。

改善策は一つではありません。

payment system同士のinteroperability、operating hoursの延長、ISO 20022等によるdata改善、account情報のpre-validation、tracking、規制・supervisionの整合、multilateral platformなど、複数layerを同時に変える必要があります。

そして2025年のFSB progress reportは、wholesaleやremittanceのspeedには改善が見られる一方、global levelでend-userが感じる改善はまだ十分ではなく、remittance costもstickyだと評価しています。

つまり、技術が一つ速くなれば解決する問題ではありません。

国際送金の難しさは、世界中の金融systemを相互運用させる難しさそのものです。


まとめ

国際送金を理解するうえで、最も大切なのはSWIFTとmoney movementを分けることです。

SWIFTはmessageを運びます。

Correspondent Bankingは、国をまたぐ銀行同士にaccount relationshipを作ります。

payment systemはbank間のsettlementを支えます。

そしてその間に、FX、liquidity、compliance、営業時間、data format、複数のintermediaryが入ります。

だから国際送金は、国内の即時決済より長いchainになりやすく、costも見えにくくなります。

一言で言えば、問題は「messageを世界へ送れるか」ではありません。

異なる国・通貨・銀行・規制・settlement systemを、一つのpaymentとして最後までつなげられるか。

そこがcross-border paymentsの本質です。


主な一次資料

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