最終確認:2026年10月3日
カードをかざして「承認されました」と表示された瞬間、お店にはもう代金が入っているのでしょうか。
答えは、少なくとも一般的なカード決済の概念上は「まだ」です。
オーソリ(Authorization)は、イシュアがその取引を通してよいかを判断する段階です。その後、最終的な売上データを送るCapture / Presentment、取引情報を照合して決済参加者の債権債務を整理するClearing、実際に資金を移すSettlementへと進みます。
Otakuwalletでは、「昔のクレジットカードはどう承認していた?オーソリが生まれた理由とBASE Iの歴史」で、電話承認から電子Authorizationへの進化を追ってきました。
しかし、承認された取引が「売上」として確定し、カード会員の請求と加盟店側の入金につながるまでには、もう一つ重要な仕組みがあります。それがClearingです。
- まず結論:Authorizationは「通してよいか」、Clearingは「何をいくら精算するか」をそろえる
- 1. オーソリ承認は「お金が動いた」という意味ではない
- 2. Captureとは何か――承認済み取引を次の段階へ進める
- 3. Presentmentとは何か――「この取引を請求対象として処理してください」
- 4. Clearingでは何をしているのか
- 5. Visaでは「Clearing Record」がSettlementにつながる
- 6. Interchange feeはどこで関係するのか
- 7. ClearingとSettlementは何が違うのか
- 8. MastercardではClearingとSettlementを別システムとして説明している
- 9. ただし、カード取引は全部「二段階」ではない
- 10. Clearingが終われば、加盟店にすぐ入金されるのか
- 11. Card schemeのClearingとRTGSも同じではない
- 12. 1件のカード決済を最後まで見る
- まとめ
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- 出典
まず結論:Authorizationは「通してよいか」、Clearingは「何をいくら精算するか」をそろえる
01 概念上のCard Transaction Lifecycle
Authorization
この取引を通してよいか
Final amount / fulfillment
最終金額・提供条件を確定
Capture / Presentment
最終transaction dataを提出
Clearing
取引情報・fee・settlement positionを整理
Settlement
obligationに基づきfundsを決済
Merchant payout
Acquirer / PSPから加盟店へ入金
概念図です。Single Message SystemではAuthorizationとClearingが一つのmessage formatで処理される場合があります。
重要なのは「メッセージの本数」ではなく、承認・最終データ確定・Clearing・funds settlementという機能の違いです。
1. オーソリ承認は「お金が動いた」という意味ではない
AuthorizationでIssuerが確認するのは、カードやaccountが利用可能か、利用可能額や資金は足りるか、不正利用の疑いはないか、といった点です。
ホテル、レンタカー、ガソリンスタンド、ECなどでは、Authorization時点の金額と最終金額が一致しない場合があります。ホテルなら宿泊開始時に一定額をholdし、チェックアウト時に追加利用分を含めて金額を確定することがあります。
この仕組みはAuthorization HoldとReversalの記事で詳しく扱っています。
Authorizationは「取引可能性の確認」であり、最終売上データそのものではありません。
2. Captureとは何か――承認済み取引を次の段階へ進める
Visaの現行VisaNet Connect – Acceptanceでは、この違いが分かりやすく表れています。
Authorization APIはPANまたはTokenを使った取引について承認を求めるAPIです。一方、承認済み取引をClearingとSettlementへ進めるには後続のCapture API requestが必要と説明されています。
Capture APIは、商品やサービスが提供され、最終的な取引を確定させた後に、承認済みAuthorizationをClearing / Settlementへ進めるために使われます。
ここで注意したいのは、VisaNet ConnectがVisaの一つの現行product / interfaceだということです。「Visa取引は世界中ですべて同じAPI sequence」という意味ではありません。
3. Presentmentとは何か――「この取引を請求対象として処理してください」
Card Networkの文書では、Captureと並んでPresentmentという言葉も頻繁に登場します。
MastercardのDual Message Systemでは、Authorizationの後にAcquirerがFirst Presentment messageを送ります。Transaction dataをIssuer側へ提出し、Cardholder accountへのpostingとClearingにつなげる段階です。
概念的には、AcquirerからNetworkを通じてIssuerへ「このAuthorizationに対応する最終取引は、この金額・この条件です」というfinancial transaction dataを提出するイメージです。
ただしCapture、Presentment、Clearingの使われ方はnetwork、processor、gateway、APIによって完全に同一ではありません。この記事ではroleで区別します。
4. Clearingでは何をしているのか
MastercardはClearingを、AcquirerとIssuerの間でfinancial transaction detailsを交換し、Cardholder accountへのpostingとsettlement positionのreconciliationを可能にするprocessと説明しています。
MastercardのGlobal Clearing Management System(GCMS)は、transaction informationを受け取り、dataをeditし、appropriate feesをassessし、適切なreceiverへrouteします。
02 Clearingで起きること
Acquirer
final transaction details
Scheme / Clearing system
validation / edits / fee assessment / reconciliation / settlement position
Issuer
posting / obligation information
つまりClearingは、単なる「売上ファイル転送」ではありません。
取引データをそろえ、account postingと「誰が誰にいくら支払うか」の計算へつなぐprocessです。
5. Visaでは「Clearing Record」がSettlementにつながる
Visa Core Rulesの2026年4月版では、Clearing RecordをPresentment、Dispute、Reversal、Adjustmentなどをtransaction clearingに必要なformatで表したrecordとして定義しています。
さらにRulesでは、MemberがClearing RecordをVisaNetへsubmitした時点で、該当するsettlement serviceとsettlement currencyのtimeframeに従ってsettleできる状態でなければならないと定めています。
ここから分かるのは、Clearing RecordのsubmissionがSettlement obligationへつながる重要な境界だということです。
6. Interchange feeはどこで関係するのか
Clearingを理解すると、加盟店手数料とInterchange feeの記事も見え方が変わります。
MastercardのGCMS説明では、Clearing処理の中でappropriate feesをassessするとされています。Interchangeはカードをタッチした瞬間に現金のようにIssuerへ手渡されるものではなく、transaction dataをもとにNetwork内のClearing / Settlement processでeconomic positionへ反映されます。
7. ClearingとSettlementは何が違うのか
BISのCommittee on Payments and Market Infrastructures(CPMI)はClearing / Clearanceを、payment order等をsettlement前にtransmit、reconcile、必要に応じてconfirmし、nettingやfinal positions for settlementの確立を含み得るprocessとして整理しています。
一方Settlementは、形成されたobligationに基づいてfundsやassetを移す段階です。
かなり単純化すれば、
Clearing = 「誰が誰に、最終的にいくら支払うか」を整理する
Settlement = 「そのobligationを実際に資金で決済する」
ただしCPMI自身も「clearing」という語が不正確にsettlementまで含む意味で使われる場合があると注意しています。日本語の「清算」「精算」も曖昧になりやすいため、OtakuwalletではClearingとSettlementを分けて記述します。
8. MastercardではClearingとSettlementを別システムとして説明している
Mastercard Switching Servicesは、Authorization Platform、Global Clearing Management System(GCMS)、Settlement Account Management(SAM)を分けて説明しています。
GCMSがClearingを担い、SAMがSettlementを担います。Clearing後に各AcquirerとIssuerのnet positionを計算し、Settlementでadvisementとfund transferを行う、という役割分担です。
取引データの処理と資金移動は同じprocessではありません。
9. ただし、カード取引は全部「二段階」ではない
MastercardにはDual Message SystemとSingle Message Systemがあります。
Dual MessageではAuthorizationとClearingを別messageで処理します。一方、Single Message SystemではAuthorizationとClearingをone-message formatで処理します。
03 機能とmessage implementationは別
1. Authorization
2. Clearing / Presentment
AuthorizationとClearingをone-message formatで処理
AuthorizationとClearingは機能として区別できても、実装上のmessage数はnetwork / productにより異なります。
10. Clearingが終われば、加盟店にすぐ入金されるのか
ここも別問題です。
Card Network内でIssuerとAcquirerのSettlement obligationが形成・決済されることと、Merchantの銀行口座へ売上金が入ることは同じtimingとは限りません。
Merchantへのpayout timingはAcquirer、PSP、merchant agreement、market、currency、risk reserve、weekend / holidayなどで変わります。
Network Settlement = Merchant payoutではありません。
11. Card schemeのClearingとRTGSも同じではない
Bank of Englandは、Visa EuropeやMastercardなどのretail payment systemsから生じたmultilateral net obligationsが、中央銀行のRTGS accountを使ってsettleされる例を説明しています。
概念的には、Card transaction → Card scheme clearing → Issuer / Acquirer settlement position → Settlement bank / central-bank infrastructure → Final settlement、という複数レイヤーがあります。
これはVisaやMastercardが世界中で必ず中央銀行RTGSへ直接接続する、という意味ではありません。具体的arrangementはnetwork、region、currencyによって異なります。
12. 1件のカード決済を最後まで見る
- Merchant acceptance:Acquirer / PSPがMerchantをNetworkへ接続
- Authorization:Issuerがapprove / decline
- Hold / final amount:必要に応じてholdし最終金額を確定
- Capture / Presentment:final transaction dataをsubmit
- Clearing:transaction details、fee、settlement positionを処理
- Settlement:形成されたobligationに基づきfundsを決済
- Merchant payout:Acquirer / PSPとの契約に従いMerchantへ入金
この流れを理解すると、カードをタッチしてからお店にお金が届くまでが、一つの瞬間ではなく複数のlayerでできていることが分かります。
まとめ
カード決済は、Issuerが「承認」と返した瞬間にすべて終わるわけではありません。
Authorizationの後には最終取引を確定するCapture / Presentmentがあり、transaction dataを照合してsettlement positionを作るClearingがあり、その後にSettlementがあります。
Authorization = 承認
Clearing = transaction dataとsettlement obligationの整理
Settlement = 資金決済
ただし実際のmessage flowはnetworkやproductによって異なり、Single Message SystemのようにAuthorizationとClearingが一つのmessageで処理される場合もあります。
シリーズ全体:決済の歴史としくみ|カード・EC・タッチ・認証の進化をたどる
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- カード決済のお金はいつ動く?Settlementと加盟店入金の仕組み
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出典
| 出典 | 公開日・版 | 用途 | 取得日 |
|---|---|---|---|
| Visa Developer, VisaNet Connect – Acceptance | 現行ページ | Authorization / Capture / settlement example | 2026年10月3日 |
| Visa Core Rules and Visa Product and Service Rules | 2026年4月18日版 | Clearing Record / settlement readiness | 2026年10月3日 |
| Mastercard, Switching explained | 現行ページ | Authorization / Clearing / Settlement、GCMS / SAM | 2026年10月3日 |
| Mastercard Transaction Processing Rules | 2025年6月10日版 | First Presentment / Dual Message / reversal | 2026年10月3日 |
| Mastercard, Chargebacks Made Simple | 現行guide | Dual Message / Single Message | 2026年10月3日 |
| Federal Reserve, Regulation II §235.2 | 現行 | Network / Acquirer / Processor role | 2026年10月3日 |
| BIS / CPMI Glossary | 現行 | Clearing / Settlement terminology | 2026年10月3日 |
| Bank of England, RTGS / CHAPS | 現行 | retail net obligations / RTGS layer | 2026年10月3日 |
