RESASで外国人観光客のクレジットカード消費を分析できる?


一般公開版の機能と、データ活用の可能性を探る

外国人訪日客の消費動向が注目されるなか、「どの国の観光客がどれくらいクレジットカードを使っているか?」を詳細に把握したいというニーズが高まっています。ここでは、政府が提供する地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」で、外国人訪問客のクレジットカード利用データを閲覧・分析できるかどうか、活用の可能性を探ってみます。


1. RESASとは何か?

RESASは、内閣官房や経済産業省が中心となって構築した「地域経済分析システム」で、人口・産業構造・観光・商業統計など、さまざまな公的データを地図やグラフで直感的に確認できるプラットフォームです。自治体の政策立案や企業の地域分析など、幅広い分野で活用が進んでいます。

  • 主な機能
  • 人口動態(年齢別人口、将来推計など)
  • 商業・産業の売上高や事業所分布
  • 観光客数(国内外)、宿泊統計 など

残念ながら、一般に公開されているRESASのメニューでは、「クレジットカード利用データ(外国人が使った金額や取引件数、取引単価など)」を直接表示する機能はありません。


2. なぜクレジットカード実績はRESASにないのか?

RESASのデータは、総務省や経済産業省、観光庁などが公表している公的統計、もしくは官民連携で取得した「人の流れ」(携帯位置情報等)をもとに構成されています。しかし、クレジットカード会社が保有する決済データは基本的に「民間企業の機密情報」であり、公的統計に含まれていないことが多いのです。

  • 観光マップなどを見ても、示されているのは「旅行者数・宿泊数」「国内外旅行者の消費額(推計)」などであり、カード利用金額や取引件数を国別に表示するような項目はありません。
  • 一部、自治体やDMO(Destination Management Organization)がカード会社と連携し、独自にカード利用データを入手し分析している例はありますが、それはあくまで個別契約に基づく取り組みで、RESAS一般公開版に組み込まれているわけではありません。

3. クレジットカードの分析に役立つ可能性は?

(1) RESASは“周辺データ”の把握に有用

「外国人観光客が訪れる数が多い地域」や「商業販売額が大きい地域」などを確認することで、カード利用が多そうなエリアの“見当”をつけることはできます。

  • たとえば、観光分析機能で「どの国からの訪問客がどれくらいいるか」を確認
  • 小売業・飲食・宿泊業の売上高や事業所数を見ながら、インバウンド需要が高いかどうかを推測

とはいえ、これはあくまで「周辺情報から推測する」レベルで、実際のクレジットカード取引件数や客単価を直接知ることはできません。

(2) カード会社や自治体拡張版との連携

一部の自治体向けやDMO向けには、クレジットカード会社と連携して、地域内でのカード決済情報(特に外国発行カード)をレポート化している事例があります。こうした事例では、RESASに似たダッシュボードを作り、外国人観光客のカード消費額や国別構成比などを分析しているケースも。ただし、これらは一般には公開されていない、自治体やDMOの内部利用向けがほとんどです。


4. クレジットカードの消費データを活用したいなら?

もし「具体的なカード利用金額や取引件数、国別の利用額推移」などを知りたい場合は、次のようなアプローチが考えられます。

  1. カード会社のインバウンド分析サービスを利用
  • JCBやVISA、Mastercardなどのカード会社が、自治体・企業向けにデータレポートや分析サービスを提供している場合があります。
  • 国別の利用動向、ジャンル別の利用金額など、RESASにはない詳細な情報が得られる可能性が高いです。
  1. 地方自治体・DMOとの連携
  • すでに自治体やDMO(観光地域づくり法人)がカード会社と提携し、インバウンド消費データを取得しているケースがあります。
  • 観光振興の一環として、外部の調査会社と組んだプロジェクトに参画することで、データを共有してもらえる可能性があります。
  1. その他の公的統計・調査データと組み合わせる
  • 総務省「家計調査」や観光庁の「訪日外国人消費動向調査」など、別の公的調査にはクレジットカード利用に関する一部のヒントが含まれている場合も。
  • ただし、細かな地域別・国別の詳細データは得られないことが多いです。

5. まとめ:RESASはあくまで基礎データのプラットフォーム

  • 一般公開されているRESAS では、外国人訪問客のクレジットカード消費データそのものを直接見ることはできません。
  • しかし、観光客数や商業統計、人口動態といったデータを使えば、「どこでインバウンド需要が高そうか」「どのエリアに購買力が集まりそうか」などの分析は可能です。
  • 本格的なクレジットカード取引データを活用するには、カード会社やDMO、自治体などとの別途連携・契約が必要になります。

今後、キャッシュレス化の進展やインバウンド需要の回復にともない、こうしたクレジットカード決済データをオープンに活用する動きはますます重要性を増すはず。もし地域経済の活性化やマーケティングに深く踏み込みたい場合は、RESASの“周辺情報”+カード会社の“決済ビッグデータ” という形で、連携を図るのがおすすめです。


参考リンク

まとめ

  • RESAS=公的統計を可視化する汎用ツール
  • クレジットカード決済=民間企業の固有データ
  • データの性質が異なるため、一般公開のRESASではカード利用データは含まれず。
  • ただし、自治体・DMO向けにカード会社等と連携した独自システムを使っている例もある。

RESASを起点に、地域の商業動向や観光客数などを押さえたうえで、さらなるカード消費データの取得方法を検討するのが現実的なステップといえるでしょう。

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