EC事業者の4割以上が不正被害を経験!?
クレカ不正・悪質転売の実態と、いま求められる対策とは
EC(電子商取引)業界が年々拡大し続けるなか、クレジットカード不正利用や悪質転売による被害も深刻化しています。株式会社cacco(以下、かっこ)が行った調査「EC事業者の不正被害・対策」によると、EC事業者の約41.8%が不正被害を受けた経験があるとのこと。今回は、その調査結果をもとに、不正被害の事例や対策のポイントをまとめました。EC事業を営む方や、これからオンラインショップを始めようとする方は、ぜひチェックしてみてください。
1. 4割超が被害!? 主な不正被害の内容
● クレジットカードの不正利用
ネット上に流出したカード情報や盗難カードが使われ、正規の購入者になりすまして商品を購入されるケースです。
- 配送先とカード名義の不一致
- 転送サービスを使った住所の隠蔽
- 海外へ商品を持ち逃げされる
など、さまざまな手口が報告されています。
● 悪質転売
最近は、SNSやフリマアプリの普及に伴い、限定グッズや人気商品の“即買い占め”が増えています。
- レア商品の高額転売
- 期間限定コラボ商品の大量買い占め
これらの行為によって正規ユーザーが商品を手にできないだけでなく、ブランドイメージを損ねたり、メーカーや販売店がクレーム対応に追われるなど、被害は多岐にわたります。
● アカウント乗っ取り・なりすまし
ECサイトの会員情報(ID、パスワード)が流出・盗難され、第三者が不正ログインするケース。
- 登録住所やクレカ情報を無断で変更
- 他人のポイントやクーポンを勝手に使用
といった被害が少なくありません。
● 不正リセール(返品悪用)
虚偽の理由を使った返品・返金を繰り返し、商品を実質的にタダで手に入れようとするケースです。
- 「注文と違う商品が届いた」と言いがかりをつけ、返金後に商品だけキープ
- 商品が“本当に”不良品かどうかの確認作業コストが増大
こうした不正は、EC事業者にとって大きな金銭的損失やオペレーション負担をもたらします。
2. 不正被害による損害とリスク
1回の不正注文による損失は数万円~数十万円に及ぶ場合も。被害がチャージバック(売上金の取り消し)として処理されると、EC事業者が返金や在庫ロスのコストをすべてかぶることになります。また、クレーム対応や調査費用、ブランドイメージの低下など、目に見えない被害も少なくありません。
特に中小規模のEC事業者は、1件の不正だけでも致命的ダメージを被る恐れがあります。店舗運営の継続が難しくなるケースもあるため、早い段階で対策を講じておくことが重要です。
3. 事業者が実施する不正対策の現状
● 目視チェック・ブラックリスト管理
最も一般的なのが、怪しい注文を人の目で確認し、ブラックリストを独自に作る手法です。
- 配送先が転送サービスや海外住所ではないか
- 過去に不正使用されたカード番号/電話番号でないか
ただし、オペレーションコストがかさむため、注文数が多いEC店舗では対応しきれなくなることも。
● 3Dセキュア(本人認証サービス)の導入
クレジットカード情報入力時にカード会社指定のパスワードを求める仕組みで、盗まれたカード番号だけでは決済ができないようにするものです。
- 不正利用のハードルが上がる
- 導入や運用に伴う費用が発生
- 一部ユーザーが認証の手間を嫌う可能性がある
● 不正検知サービスの活用
caccoなどの専門会社が提供するAI・機械学習ベースの不正検知サービスでは、
- 端末情報やIPアドレス
- 過去の購買履歴や行動パターン
などを総合的にスコアリングし、怪しい取引を自動ブロックします。
導入コストがかかる一方、手間のかかる目視チェックを大幅に削減できるメリットが注目されています。
● アカウントセキュリティの強化
- パスワードの定期変更や2段階認証
- ログイン異常検知・即時ロック機能の実装
- 不審アクセス元からのログインをブロック
これらを適切に行うことで、乗っ取りやなりすましのリスクを低減できます。
4. 中小規模ECほど求められる「コストと効果」のバランス
大手ECモールや有名ブランドECでは、担当部署を設置し、高度な不正検知システムを導入しているケースが多く見られます。一方で、中小規模のEC店舗は導入コストや専門人材の確保が難しいのが現状。
しかし、被害が起きたときのリスクも同じく大きいため、以下のように「複数の対策を少しずつ組み合わせる」ことが望まれます。
- コストの低い基本対策
- 3Dセキュア導入
- ブラックリスト・ホワイトリスト管理
- 危険取引の目視チェック
- 段階的に高度なサービスを検討
- 不正検知サービスの部分導入
- アカウント乗っ取り防止(2段階認証・パスワードポリシーの厳格化)
- 返金・返品ポリシーの明確化
5. まとめ:被害を“他人事”と捉えず、早めの対策を!
EC事業の成長とともに、不正の手口はますます巧妙化していくことが予想されます。“うちは規模が小さいから狙われない”ではなく、“狙われるかもしれない”という視点で対策を進めることが大切です。
- 不正被害の4割超という数字は、すでに多くの事業者がリアルに被害を受けていることの証拠。
- 1回の被害が大きな損失につながるからこそ、早めのセキュリティ強化が必要。
- 対策コストやオペレーションを最適化できるよう、自社の規模・リソースに合わせた複数の防止策を組み合わせるのが有効です。
自社ECサイトの安全性を高め、正規ユーザーに安心してショッピングを楽しんでもらうためにも、今回の調査結果を踏まえた不正対策の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考
- cacco公式発表「EC事業者の不正被害・対策」調査
- ネット経済新聞(netKeizai.com)記事