大袈裟にいうと、決済には全てがある
国際的な陰謀、地政学、強盗、法廷ドラマにも事欠かない。決済にはすべてがあるのだ。古今東西、決済は、その便利さゆえに金融犯罪の標的となってきた。特に、現代ではインターネット上での決済が増え、それに伴ってオンライン犯罪の手口も増えている。ここでは、具体例を交えながら決済の金融犯罪について考えていく。
例えば、2013年には、ハッカーがターゲットとする米国大手小売店のターゲット・ブランドで、顧客データが流出する事件があった。ハッカーは、同社のPOSシステムに侵入することで、顧客のクレジットカード情報を盗み出し、その情報を販売することで利益を得た。2014年には、ホームデポでも同様の事件が起きた。このような大規模な決済データの流出事件は、決済の安全性に対する懸念を高めている。
また、オンラインの決済システムを悪用する手口として、フィッシング詐欺がある。フィッシング詐欺は、偽のウェブサイトなどを用いて、ユーザーからパスワードやクレジットカード番号などの個人情報を盗み出す詐欺である。この手口を用いた事件としては、2014年にターゲットと同じように、米大手小売店のニーマン・マーカスが広く被害に遭った例が挙げられる。それ以外にも、標的型攻撃やマルウェアによる情報漏洩など、多様な手口が存在する。
更に、2016年には、バングラデシュ中央銀行のシステムに侵入し、SWIFT(SWIFTは、国際銀行間通信協会の略称で、世界中の銀行や証券取引所が利用する、世界的な決済ネットワークのこと)を用いて、世界各国の口座に1億ドル以上を不正に振り込もうとした事件があった。この事件は、SWIFTを利用した不正送金事件としても知られており、大きな社会的な関心を引いた。
金融犯罪が行われるにあたって、その過程において、決済が重要な役割を持っていることがわかる。犯罪者は、不正な決済をあらゆる手段を用いて実行し、犯罪の利益を得ることを目指している。一方で、決済事業者や金融機関は、取引を安全にするために、セキュリティ対策や不審な取引の監視を行っている。
あまりにも日常に決済が溶け込んでいるので、忘れがちではあるが、決済に関わるすべての人々が、安全な取引を行うために細心の注意を払う必要がある。